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随時所感

2013.07.23

ねじれを解消した自民党に求められること

7月21日に行われた参議院選挙で自民党が圧勝、国会のねじれが解消した。

私自身も自民党所属の地方議員として「決められない国会政治」からの脱却を心から喜んでいるひとりであるが、自民党にとって、ねじれ解消という“完全な権力”を手にした今だからこそ物事を進めるにあたっては今まで以上に謙虚かつ慎重であらねばならないと感じる。

とかく、TPP交渉、消費税引き上げの景気判断、憲法改正等々、一手間違えば命取りになりかねない難問への対応は、かつての「郵政民営化」のような、政局化させてムードを作り上げ、数で押し倒すという手法で進めては絶対にならない。

自民党内で主流派と意見が食い違った場合、次回の選挙で公認が取り消されるとに怯え自分の考えを押し殺し、進んで長いものに巻かれる議員がいたとしたら、それは最低の保身議員である。

しかし一番重要なことは、腹にイチモツ独自のロジック・信念を持っている本来は尊重されるべき自党に所属の議員を、最低の保身議員に成り下がらせなくても済む政党として一定の寛容さを確保することである。

政権与党は党内で賛否の割れるような難問に直面したとき、むやみに党内での多数決に結論を求めるのではなく、時間と人的エネルギーを尽くして徹底した熟議を行う度量・寛容さを備えていなければならない。

時には「先送り」と批判されても、それが正解である場合があるということを歴史に学ぶべきである。

党内で意見が割れた場合、少数派をその都度、数を頼みに粛清していたら結局、刺客選挙で空前のチルドレンブームを起こした後に下野させられた4年前の自民党、そして、政権交代を果たしたものの分裂を重ね、出た者も残った者も今や壊滅の危機に瀕している民主党の二の舞ではないだろうか。

政治家、特に「議員」とは、冷静にじっくりと議論する専門家でなければならないはずだ。

他党同士であれば最終的には“思想が違う”のだから多数決もやむを得ない。しかし、同じ党内にあっては時間がかかっても全会一致を目指すべきである。

意見の違う者を権力の脅しや数の力で屈服させるのでなく、話し合いで説得し、お互いが時には妥協し合うことによって相手を「納得せざるをえない」というところまで煮詰めていかなければならない。

それには「まァまァ、ここは誰々さんに免じて」とか「多くの人たちがこう言っいてることだし…」というような情緒的な説得論でなく、本当の、理論的な「熟議」が求められる。

自民党の意思決定は総務会で行われる。

自民党の総務会は伝統的に全会一致が原則であった。

が、たった一度だけその原則を破り、多数決を強行したことがあった。

「郵政民営化」である。

その結果、それまでの議員としての活動・貢献などは無視され、郵政民営化反対の一点を以て党を追放され、地元に刺客を立てられた野田聖子氏。

彼女は最低の保身議員にはならなかった。その選択の辛さをまさに身をもって体感した彼女が現在、自民党の総務会長である。

強硬派・タカ派のイメージで知られる安倍総理であるが、一方で野田氏を総務会長に抜擢したとういうバランス感覚は注目すべきである。

ねじれが解消した今だからこそ、かつての自民党の良さを見直す謙虚さと、悪かった点を素直に反省する度量、そしてそれを教訓として生かしていく智慧が必要だ。

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