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随時所感

2013.09.21

消費増税のタイミング

昨日、高市政調会長の講演を聞く機会があった。

秋の臨時国会、原発汚染水問題、等々、様々な課題が語られた中で、10月1日にも総理の決断が迫られる消費税問題の話題が印象に残った。

他の問題と違い、総理に一定の“想い”と“迷い”がみられるからである。

過去、政治が消費税に使うエネルギーは並大抵のものではなかった。大平正芳が一般消費税導入を口にしただけで総選挙に大敗、竹下内閣が吹き飛び、橋本内閣も退陣に追い込まれ、野田内閣も政権交代となった。消費税の良し悪しは別として、当時の「党より国家だ」と民主党の分裂を招いてでも3党合意を達成した野田氏のひたむきな姿勢に党派を超えて共感した国民も少なくなかろう。が、蓋を開けてみれば惨憺たる結果の政権交代である。

アベノミクスにオリンピック招致と、つきにつきまくっている第2次安倍内閣であるが、その支えは偏に国民の景気への期待感なのであって、景気が腰折れすれば人気など一気に吹き飛び、ひとたび不人気となればにっちもさっちもいかなくなることは第1次内閣で骨身に沁みた安倍総理である。神経質になるのも無理はない。

そもそも浜田宏一、本田悦朗両氏の内閣官房参与登用を見てもわかるが、安倍総理の“想い”とは消費増税によるアベノミクス腰折れの懸念にある。

一方で民主党があそこまで惨憺たる結果になったのは野田氏でなく、「最低でも県外」「トラストミー」の鳩山氏に絶大な国民の信用失墜効果があったのは今更言うまでもない。

消費増税について、3党合意の一角でもあった自民党が今、先延ばしの判断をすれば、「決められない政治の再来」とマスコミが囃し立てるのは簡単に想像できる。そして、先伸ばしたら、今度はいつやるのか、その決定を今度は自民党の責任でやることになる。「景気条項があるにせよ、増税を決めたのは野田政権なんだから、なにも安倍さんが背負い込むことはない。」そんな声にも理解できる。

いずれの道を選んだにしろ、順風満帆の安倍政権にとって、この消費税問題が蟻の一穴となる危険性を持っているのは確かである。

だから“迷い”が生じる。

高市氏は「個人的には予定通り消費増税の決断をすべき」であると、加えて「特に当選1回の新人議員らがそう主張している」と述べていた。次の選挙に一番神経を尖らせている新人議員である。彼らは毎週末地元へ帰り、市民の感覚・空気を肌で感じている。その判断が“予定通り消費増税”であるなら、いずれは上げる消費税、政治的タイミングは「今だ!」といえる。

景気を考えれば回復途上の今ではない。しかし増税による冷え込みを凌ぐ対策を打つことは可能である。しかし、「先延ばし」というマイナス的言葉の響きも含め、先伸ばした後のリスクは計り知れない。

結果、景気リスクは追加経済対策で回避し、政権運営上のリスクは、“予定通りやること”で回避する。10月1日、安倍総理決断の時だ。

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