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随時所感

2012.05.22

寸鉄人を刺す。~ヤジは議会の華~

昔から「ヤジは議会の華」といわれる。

と言っても国会でも地方議会でもヤジは「不規則発言」とされ、原則として議事録には記載されない。仮に度を越したヤジが飛び出せば議長が議場の整理権において「静粛に」と注意を促し、さらに続けば退場を命じることもあり得る。

しかし、ヤジが全てダメかというと、そうとも言い切れない。決してヤジを勧めているわけではないが(私はついヤジってしまう方だが・・・)、ヤジを浴びせられた時の表情や言葉などに、その人の人間性や本性が垣間見えるという側面があるのも事実である。ヤジのなかにはズバリ的を射た優れたものがあるからだ。

寸鉄人を刺すヤジとはなかなか難しいものである。私もまだまだ修行が足らず、市議会で主張に矛盾があるような議論が目の前で行われたりなんかすると、つい口数多くヤジを飛ばしすぎて後で反省することがある。

鈴木宗男さんが国会のスピッツなどと言われたように私も豊橋市議会の??などと変なあだ名がつけられてはたまらない。

さて、戦前、戦後の国会でヤジ将軍の異名をとった、三木武吉という代議士をご存知だろうか。彼の数ある名物ヤジの中でも最も有名なのが「ダルマ発言」。

大正9年1月、原内閣の高橋是清蔵相が海軍予算について演説中、「陸海軍ともに耐え難きを忍んで長期の計画と致し、陸軍は十年、海軍は八年の・・・」と言いかけたとき「ダルマは九年!」とヤジった。これは高橋のあだ名の「ダルマ」に「達磨大師が、中国の少林寺で壁に向かって九年間座禅し悟りを開いた」という面壁九年の故事をかけた頓智の利いたものだった。議場は爆笑に包まれ、高橋も演説を中断してひな壇にいた原を振り返り苦笑い。普段から謹厳なことで知られる加藤高明や浜口雄幸までが議席で笑い声を上げたという。

ところで、ヤジにも侵してはならないマナー、即ち、禁じ手がある。

「馬鹿」「チビ」「デブ」などという稚拙な暴言はもちろんダメであるが、ヤジに対するヤジは禁じ手といえよう。

あくまでヤジとは質疑者あるいは答弁者の発言(演説)に向かって議席の議員が飛ばすものであって、ヤジにヤジを飛ばしていたら議場での議論はそっちのけの場外乱闘・罵り合いになってしまう。国会では市議会とは比べものにならないくらいの凄まじい怒号・ヤジが飛び交うが、野党と与党が演説者そっちのけで罵り合ったり、議席でつかみ合いの喧嘩になることはない。

議会人としての暗黙のルールがそこには存在しているのだ。

そもそも不規則発言であるヤジ。しかし、一方で議会の華と言われ議会の中でも大切にされてきた。一線を越えない侵さざるべき暗黙のルール。議会とはそういう積み重ねの上に成り立っているといえよう。

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